妻は精神病 今の僕の気持ち 9

詩織が入院して一週間。今日ははじめての対面の日だ。

「ばぱー!はやくままのとこいこー!はやくはやくー!」

「10時からだからもう少しね~。」

「え~はやくままとこいくぅ~!」

待ちきれない子供達。

それは私も一緒だった。

一週間も子供達から離れれば詩織も寂しいだろう。
そして、どこまで体調は良くなっただろう。

―という淡い期待…。

一週間ぶりに会った詩織は少しやつれているように見えたが元気そうだった。

嬉しそうに抱きつく子供達。

病室の中で友達も出来たと言っていた。

(…精神病の友達なんて作るんじゃねぇよ)と本気で思った。

そして気のせいかほんの少し子供達に対して、詩織の態度がよそよそしさを感じた。

なんだかんだ1時間の面談はあっという間に過ぎた。

そしてまた、詩織との別れ。

泣き叫ぶ子供達…。

退院すればまた元に戻る。

退院すればまた元に戻るんだ。

そう呪文のように自分に言い聞かせながら、妻の担当の先生から話を聞いた。

続く
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子供達に罪は何もない。

子供達の方が『なんでなんで』だっただろう。

子供達の為にも詩織さんの体調は良くなってもらいたかった。

それは当然の気持ちだと思うし、否定はしない。

だけど、やっぱり違うんだと今は思います。

子供達の為にも良くなってもらいたかったのは、私の気持ちだけの想い。

詩織さんはどう思っていただろうか?

詩織さんはどうしたかったんだろうか?

確かにその時は「私も良くなりたい」と言っていました。

でもきっと考え方が違ったんだと思います。

詩織さんは今の辛さをなんとかしたかった

私は子供達の為にも良くなってもらいたかった

そこにズレが生じていた。

小さなズレはやがて摩擦を生み、大きな亀裂を生じる。

自然の法則を考えもしなかったあの頃。

世の中は『個』と『個』の群像が劇を織り成すものだと思っていた。

『個』=自分
『個』=詩織さん
『個』=優菜
『個』=健斗
『個』=あるいは病院、医師
etc

それぞれの思いや想いが交錯し、世界を綾なしていると思っていました。

今は違うと思います。

世界はもっと複雑で自然の法則の上に彩られていると思います。

人の気持ちはその人だけの気持ちだけれども、
目に見えないけれどもどこかで繋がっていて、
だからなんとなく相手の気持ちに気が付けるのだと思います。

今でもあの時の子供達の姿が目に浮かぶ。

だから私は『母親』になりたかった。

あの子達の『母親』になりたかったんだ。

全ての子供にとって『母親』は特別な存在であることを知り、
私はあの子達の母親になりたかった。

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コメント

  1. n より:

    支えてたんですね。
    きつかったでしょう。
    でも立派だと褒めたりはしません、パートナーとして当たり前の事をしていたのですから。
    偏見がある人は逆に褒めてくるでしょうね。

  2. よりこ より:

    社会も強者と弱者の関係は複雑に綾なされているものです。
    弱者を見捨てたら社会がダメになるという事を無視している人があまりにも多いです。
    文章を読んでいて本当にみんな繋がっているよなぁ、と思いました。

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