妻は精神病 今の僕の気持ち 11

一週間事に妻との面談を繰り返す。

少しずつ変わってきた詩織。

少しずつ我が強くなり。

泣いてばかり。

主治医とは話が噛み合わないらしく。

「私はどうしたら良いか分からない!!」
を繰り返す。

寂しい寂しいと泣いて。

病院で出来た友達といた方が楽だと言う。

…そして一ヶ月がたち退院となった。

詩織の病気は治らない。

主治医は相変わらず『神経症』と繰り返すばかり。

一週間に一度の受診。

寝たきりの詩織。

のしかかる母への負担。

私に愚痴。
詩織から母への。
母から詩織への。

この頃から徐々に詩織の性格が変わっていく。

私が

「体が辛かったら寝てていいよ。」

と言うと詩織は

「私のせいで大変だってまた言うんでしょう!?前みたいに朝起きてご飯作って子供達の面倒見てとか出来ないから!!あんたのせいで病気になったせいもあるんだから!!このマザコン!!母親に面倒見てもらわないと仕事も出来ないくせに!!あんたは私の事全然わかってくれない!!離婚すれば!!私が悪いと思ってるんでしょう!?どうせ!あぁ―ッ!!」

等と暴言を吐き、物を投げる。

壊す。

殴る。

蹴る。

ひっかく。

叩く。

叫ぶ。

私は身を守る為に妻を掴む、そしてソファに押し付ける。なんとかして落ち着かせようとする。

「女に暴力ふるう最低男!ドメステイック・バイオレンスだ!!最低!最低!最低!ウワァァアアァァアアッ!」
と喚く詩織。

そしてひとしきり泣くと今度は、

「捨てないで!捨てないで!捨てないで!捨てないで!捨てないで!捨てないで!捨てないで!捨てないで!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ウワァァアアァァアアッ!ウワァァアアァァアアッ!」

…と過呼吸になり、体がガクガクしてきて、白眼になる。

悪魔が乗り移ったようになるのです。

そして、しばらく寝かせておくと落ち着く。

ずっと寝る。

の繰り返し。

「あなたに私の気持ちは分からない!」

「あなたのせいで病気になった!」

…辛かった。

そんなある日、ふとした事でまた詩織が不安定になった。

「アァー…!今すぐアッキーの家に連れて行って!!」

「!?なした突然!?」

時刻は夜21:30を過ぎている。

アッキーとは病院で知り合った20歳の精神病の男で私も顔を合わせた事がある。近くでアパートを借りて一人暮らしをしている。

「…不安なの…!話がしたいから…!行ってもいい!?」

「…もう夜だし、話なら俺が聞いてやるよ。」

「あなたじゃだめなの!あなたじゃわかってくれないっ!同じ病気の人じゃないとわからないから!!」

「なんで?俺じゃだめなのか!?」

「ウワァァアアァァアア!怖いの!!あなたじゃわかってくれないでしょうっ!!ウワァァアアァァアア!」

「…わかった。」

車を10分程走らせてその男の部屋に着いた。

「2時間したら電話するから迎えに来て。」

「…あぁ、わかった…」

……………………………

詩織と別れて帰る途中、涙が止まらなかった。

自分の奥さんを、

精神病の若い男の部屋に送る。

浮気とかそういうものじゃないのはわかる。

何よりも、

自分よりもそんな病気の若造に会いたいと本気で言われた事が

辛かった。

家に着いても泣いて。
泣いて。

辛くて。

辛くて。

そしたら子供達と一緒に寝てるはずの母ちゃんが起きてきて

泣きながら抱き締めてくれた。

「優和も辛いねぇ。」って

泣いた。

子供のように泣いた。

25歳の2児の父親が

子供のように泣いた。

物心がついてから

生まれて初めて

母親の胸で泣いた。

―続く。
——————————————————————————–

病院はよくわからないことを言う。
夫は気持ちをわかってくれない。
自分が何がなんだかわからない。

それはパニックになると思います。

『以前のような生活』を望む私と
『以前のような生活』を望めない詩織さんでは価値観の相違は当然現れると思います。

もちろん私が出来ることは限られているのですが、より心を寄り添うことは出来たと思います。

ただ病状として、より心を寄り添ったとしても、詩織さんのトラウマの原因である『母親』になれる訳ではないので、同じようになったとは思います。

その頃の私は詩織さんに対して『理不尽』を感じていました。

きっと詩織さんも私に対して『理不尽』さを感じていたと思います。

ただ、当時の詩織さんの『理不尽』な思考は、世の中の全てに対してに感じているものだと思いました。

人の言葉を
受け入れる
受け止める
受け流す

とした時に、私は詩織さんの言葉を全て『受け入れる』
と思っていました。

確かに表面上の言葉は受け止めていましたが、正直全てを受け入れるのに私の心のキャパシティは足りませんでした。

心の底のところで、どうしても理解出来ませんでした。

今だったら理解出来るかと言われれば、正直難しいと思います。

それはきっと、なった者にしかわからない葛藤が渦巻いているのだと思います。

当時の私には現実を受け止めるだけのキャパシティはありませんでした。

誰かに気持ちをわかって欲しかった。

なんで俺ばかりと毎日思っていた。

そこを母親がわかってくれた安心感から、堰が切れたんだと思います。

『わかってもらう』って大切ですよね。

母親の愛情というものを感じた瞬間でした。

詩織さんの『要求』を全て叶えることは私には出来ませんでしたし、それを私が悪かったとは今でも思いません。

私にも人権があるからです。

人間が二人以上集まった時はお互いに尊重し合わないと人間関係が構築出来ないと思います。

それはお互い様なのだと思います。

だから、そういう時は距離を取ることが大切なんだと思います。

今の時代は『家族』の形が多様化しています。

無理に一緒に居なくても、そういう家族の形があっても良いと思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメント

  1. よりこ より:

    詩織さんて、そうやってわかってくれる存在が皆無で育っちゃったから壊れちゃったんじゃないかって感じました。なんか辛いですよね。母親によってしか彼女の傷は癒せないけど、読んできて、その母親がちゃんとみてくれそうな感じがしなかったです。幸せになって欲しいです。

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA