妻は精神病 今の僕の気持ち 27

新しい家での新しい生活が始まった。

久しぶりの家族水入らずの生活。

少しずつ家事をはじめる詩織。

少しずつ。

少しずつ。

寝込む日が続いたり、家事が出来る日が続いたり…

それでも一生懸命、少しずつ、少しずつ頑張っていた。

…そんなある日、朝起きると詩織の姿がそこにあった。

いつもなら私が家を出る時に起きるか起きないかの詩織。

少しびっくりしていると、

「はい!お弁当。」

満面の笑みで弁当を手渡してくれた。

…ずっと食べれなかった詩織のお弁当。

二年ぶりの詩織のお弁当。

目の前の詩織の顔が段々歪んでいった。

嬉しかった。

涙が止まらなかった。

「…久しぶりだからおいしくないかも知れないけど…えへへ…お仕事頑張ってね!」

そう言って恥ずかしそうにコーヒーを入れる詩織。

「…ありがとう…。」

そう言うのが精一杯だった。

顔を洗い、スーツに着替えて、髪を整える。

いつもの朝の時間が始まった。

テーブルには新聞とトーストとコーヒーが用意されてあった。

慌ただしくトーストを口に入れ新聞に目を通す。

…あぁ、仕事に出る時間だ。

…財布と携帯電話と車のキーと

お弁当。

「行って来るね。」

「いってらっしゃい。気をつけてね。」

二年前と変わらない詩織がそこにいた。

久しぶりだった。

会社に向かう足取りが軽かった事!

―お昼

弁当を広げると手紙が出てきた。

開けると、丁寧な文字でこう書いてあった。

『いつもこんな私を支えてくれてありがとう。
そしていつも迷惑ばかりでごめんなさい。

少しずつあなたの助けになるように頑張ります。

いつも本当にありがとう。

詩織』

…お弁当は少ししょっぱい味がした。

そして顔はずっとニヤけていた。

―続く

————————————————————————————————————

詩織さんが緩解し、一つの到達点を迎えた気持ちに高揚していました。

現実から逃げずに精一杯やってきた気持ちが溢れ、そのような思いに至った自分がいました。

長い長い道程を乗り越えたような、そんな気持ちでした。

『勝って兜の尾を締めよ』

先人達のそんな言葉が今だからこそ身に染みます。

浮かれていました。
浮かれポンチでした。

違います。
そう簡単にはいかないのです。

人生はそんなに甘くありません。

それを身に染みて体感致しました。

もしも同じ状況の方がおりましたら、それはまだ『良くなる途中』であり、その『良くなる途中』という思いこそがエゴであるということに気付いてください。

そう簡単には良くなりません。

詩織さんも期待に胸を馳せたのだと思います。

私はこのまま段々と良くなっていくのだと思っていました。
思いたかったのだと思います。

だけどそう簡単にはいきません。

急な変化を求めてはいけなかったのだと思います。

それでも
ほんの少しでも
27歳の詩織さんが
ほんの少しでも笑顔になって良かった。

あの時の笑顔は
過去最高のものでした。

それだけでも良かったと思います。

自分が生きた価値がありました。

今でもそう思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメント

  1. まさ より:

    はじめまして。
    ちょっとびっくりしました。
    わずか25才での心、対応とは思えません!
    私は30才台の時、主人と別れました。子供連れて。原因は彼の心身症からくる引きこもり、破壊。もうこれ以上4才の子供に私達の喧嘩する姿は見せられない、私まで帰宅拒否だったり、喧嘩してホテルに子供連れて逃げたりと、もう限界でした。この子に誰が笑って、幸せにびくびくさせず生活させてあげられるのかな…。ン!
    私じゃない?!他に!いない!
    と、はた、と気付きました。
    私が笑っていなければ。
    ただ反面、苦しむ彼を「捨てた。」という罪悪感は6年たった今も拭えません。
    こんな薄情な女もいれば、優和さんみたいな世界遺産的な素晴らしい方も。
    ホント、尊敬します。ただ素直に。
    また素敵なパートナーに巡り会えますよ。
    絶対。
    子供さんには、父親としての気持ち、社会的道徳などあなたが伝えたいことは必ず伝わってると思う。そして、会いたいと思ってるはず。ただ詩織さんに遠慮はあるでしょうね。でも、大人になれば、もうすぐ、自分の意志で、足で逢いにきてくれるはずですよ。だって!素敵なパパですもん!私も、恥ずかしくないママとして頑張ってます。けしてパパの悪口は言いません!沢山会わせてます。良い思い出を持っていてほしいから。周りからは「そんなに頻繁に会わせて大丈夫?」とか、「変なの!」とか言われているけど、子供のパパは彼1人。でしょ??
    最後に、優和さん共感と元気をありがとうっ!

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA