妻は精神病 4

「…ひょっとしたら詩織さん、育児ノイローゼの気があるかも知れないです…」

「育児ノイローゼ…」

正直、心療内科という選択は考えもしなかった。今になれば早く行けば良かったと思うけど、当時は何をどうすればいいか全く分からなかった。

話しを聞くと、区役所には保健婦さんが常駐しており、育児についての色々なサポートをしているとの事。特に田中さんは詩織と年も近く、友達のように仲良くしていたようだ。最近は詩織も具合が悪いため、ちょくちょく電話等をして様子を見てくれていたらしい。ここ数日が特におかしかったみたいで、このまま放っておくと虐待の可能性も出てくるかも知れないと脅かされた。

…なんだそりゃ?

とりあえず詩織に電話を代わる。

受話器に向かってむせび泣く詩織。

おもわず子供達を抱き締めた。

(…こいつら…傷つけられないなぁ…)

…チン。

「…話し聞いた?」

「うん…」

「病院行ってみようか?」

「…………うん…自分では良くわからなくなっていて…でも、この体調が病気のせいなら私も治りたいから…

…行ってみる。」

「よし、わかった。」

すぐに田中さんに近くの心療内科を紹介してもらい、診察に行った。

(育児ノイローゼってあるんだなー)
等と思いながら、子供達と詩織を待った。

「―ご主人さんどうぞ。」

奥に呼ばれると不安そうな顔をした詩織がいた。

「はじめまして、この度は大変でしたね。」
優しそうな40代位の女医さんだ。

「さっそくですが、ご主人さん。
まだ診断の結果は出てないのですが、奥さんはPTSDの疑いがあるかも知れません。」

「ぴぃてぃぇすでぃ…?ってなんですか?」

「あぁ、詳しくは調べてみないとわからないのですが、PTSD。『心的外傷ストレス障害』つまり、そうですねぇ…

例えば車で大きな事故を起こした人が、トラウマになって車に乗るのが怖くて乗れなくなったりとか、

ショックの大きい出来事にあった事がトラウマになって、その後の生活に支障をきたす事…
ですね。」

「…?
それが何か?」

「つまり、奥さんは幼い頃に何かしらあった出来事が原因で今、育児が出来なくなっているのだと思います。」

「?育児ノイローゼじゃないんですか?」

「えぇ、厳密に言えば違うんです。
とりあえずまた来週こちらにおいで下さい。それまでに診断の結果が出てますので。
お大事にして下さいね。」

その日は精神安定剤を処方されただけだった。

そして次の週。

―続く。

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