妻は精神病 5

詩織と子供達を連れてまた心療内科へ行った。

しばらくのカウンセリングの後、奥へ呼ばれる。

「…やはり、詩織さんはPTSDの気があります。多分原因は幼児期の虐待によるものだと思います。」

「?…虐待?」

「はい、小さい頃詩織さんのご両親は離婚されていたそうですね。」

「…はい。」

その話は付き合っている時に詩織から聞いていた。
父親がよそに女の人を作って出ていってしまい、小学生になる前に復縁したと。
お母さんが病気がちで親戚の家に預けられてすごく淋しい想いをしたようだった。

…でも虐待って?

「……詩織さんは母親から虐待を受けていたようです。」

「!」

びっくりした。
そんなドラマみたいな話、ホントにあるんだと思った。

「…また、それとは別に母親がいなくなるかも知れないという著しい不安が幼児期にあったようです。

娘さんが3歳となり、自分でもわからないうちにそれが思い出され、強いストレスとなり、体が動かなくなった…つまり『抑鬱状態』になってしまったようです。」

…そんな事突然言われても上手く整理出来なかった。

それよりも聞きたい事は一つだった。

「そしたら、どうしたら治るんですか?」

…となりで詩織は涙目になりながらじっとしていた。

「まずは詩織さんとお子さん方を離した方がいいと思います。その上で一度、詩織さんを解放させて、そこからですね…」

「???」
解放とか、子供達から離すとか段々訳分からなくなってくる。

「…つまり、詩織さんは幼い時から性格のある一部分が成長しきれていないんです。そこが原因で体調を崩されてますので、一度お子さん方とは距離をおいて、少し休ませてあげた方がいいと思います…。とりあえずいったんお家の方で相談されてみて下さい。」

「はぁ…でも子供達はどうしたらいいんですか?」

「ですから、お母さんに見てもらうなり、預けるなりですね…」

「…………簡単に言いますけど、それってすごく大変な事ですよね…!
いきなり預かってくれるとか、離すとか、なんとか…!」

「私のせいで怒らないで!」
わっ!と泣き出す詩織。

いくつかの病院を子連れで渡り歩き、ようやく出た答えがこれで、なおかつ簡単にこれまでと違う生活になりそうだという不安や怒りや失望が一度に溢れ出してしまった。
だけど、それは詩織も一緒のはず。
いや、本当に辛いのは詩織の方だ。
しかし私は、自分の生活に対する変化の事を重く考えていた。

…怖かった。

「……実際に先生はどうするのがベストだと考えているんですか!?」

「ご主人の気持ちもわかりますよ。
私が今考えているのは入院などして一度完全にお子さんと隔離された方がよろしいかと思います。」

「にゅ、入院ですか…!?」

「入院…」
詩織も疲れた顔をしていた。

「…とりあえず今日のところは帰ります…家族で色々話し合ってみます…」

「わかりました。お薬は一応一週間分出しておきますので、何かあったらすぐにおいでなさって下さい。お大事に。」

(うちの奥さん精神病かよ…)

頭の中がぐるぐるごちゃごちゃしていた。

―続く。

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